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福岡高等裁判所 昭和38年(ラ)129号 決定 1963年12月27日

九州相互銀行

福岡信用金庫

理由

相手方中村春江が競落した不動産のうち、(1)築紫郡那珂川町大字市ノ瀬字日吉前四九〇番地宅地公簿上の地積五五一坪(現況一〇〇〇坪内外)(2)同地上所在家屋番号市ノ瀬一〇七番、木造草葺平家建居宅一棟床面積五三坪七合九勺は、ともに元抗告人の所有として抗告人名義に所有権取得の登記がなされていたものであり、(3)右地上所在家屋番号市ノ瀬一〇八番、木造瓦葺平家居宅一棟床面積一一坪五合、附属建物符合1、木造瓦葺二階建居宅一棟床面積一階一一坪二合五勺、二階五坪、附属建物符合2、木造瓦葺平家建居宅一棟床面積一四坪六勺、附属建物符合3、木造瓦葺平家建物置一棟床面積五坪五合の家屋は、元丸山剛の所有として同人名義に所有権取得の登記がなされていたものであるところ、右(1)(2)(3)の不動産は競落許可決定を原因とし、株式会社福岡相互銀行に、同銀行から昭和三四年六月二二日の売買を原因とし、即日藤野又十郎及び山田比良喜の共有に、さらに右両名から昭和三五年一一月一八日の売買を原因とし、即日吉田正男に、順次所有権移転登記がなされ、現在吉田正男の所有として登記され、相手方九州相互銀行は吉田正男が代表取締役である西日本電話株式会社を債務者とし、(1)(2)(3)の不動産につき、その所有者吉田正男との間に、昭和三五年一一月二六日設定し即日登記を経た根抵当権に基づき右不動産に対し本件競売を申立てた結果、相手方中村春江において金四、八五五、一〇〇円をもつて右(1)(2)(3)の不動産を競落したのであるが、その後相手方福岡信用金庫は、右の西日本電話株式会社を債務者とし、(1)(2)(3)の不動産につき所有者吉田正男との間に、昭和三七年四月二八日設定し、翌五月九日登記を経た根抵当権に基づいて、右不動産に対し第二の競売を申立てたので、原裁判所はこれを先に九州相互銀行が申立てた競売事件記録に添付する手続をなしたこと。抗告人は本件競売事件において債務者でないのは勿論登記をなした不動産所有者でもないこと。

右のように認められる。したがつて、抗告人主張のとおり、ある事情によつて、本件不動産の所有者である抗告人がこれを前示藤野又十郎、山田比良喜両名の共有として登記し、両名名義をもつて、同不動産を吉田正男(抗告人のいう債務者とは、抗告状の全記載及び添付の不動産売買契約書によれば、吉田正男を指すものと認められる。)に売却し、主張の事由によつて、抗告人と吉田正男との売買契約が解除され、所有権が抗告人に復帰したと仮定しても、元々抗告人は所有者として登記をしているものではないし、抗告人が前示藤野又十郎、山田比良喜両名義をもつて所有権の登記をなしたのは、(1)両名との通謀虚偽表示に基くか、(2)広義の信託行為によるか(3)両名に寄託したのかいずれかであると解すべきところ、右(1)及び(3)の場合であるとすれば、吉田正男や相手方九州相互銀行(従つて競落人)が悪意であるという主張も立証もないので、抗告人はその所有権をもつて、右の者らに対抗できず、(2)の場合であるとすれば、もとよりその所有権をもつて対抗するに由なしというべきである。したがつて所論解除の有無にかかわりなく、抗告人は競売法第二七条所定の利害関係人に当らないので、原競落決定に対し即時抗告をなしうる適格を有しないので、その余の抗告理由に対する判断をなすまでもなく、本件抗告を却下すべきものとし、主文のとおり決定する。

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